実践的かつ論理的な一冊です!定量分析実践講座

経営上の意思決定をする際に、どんな視点で何を見るのかを、コンビニ経営を題材して非常に分かりやすく、実践的に書かれています。簡易な内容から少しづつ難易度を高められており、本領域の初心者から中級者まで幅広く楽しめる一冊です。
私が得た示唆は、1.意思決定は論理と感情の融合、2.不確実性のもとでも意思決定の手法が存在するという点でした。
1.意思決定は論理と感情の融合
本書の中でもっとも印象的だったのは、ひとは必ずしも合理的な行動を取らないという、自己利益追求の思想に疑問を投げかけているところでした。囚人のジレンマなど合理的な思考を行うもの同士が行動すると必ずしも最適解にならないということをさしています。この疑問をロゴスとミュトスの考え方でまとめている点は面白かったです。人は結局、合理性ではなく「感情」、分解された結果ではなく「統合」、言語ではなく、「イメージ」「ものがたり」で意思決定しているというのが著者の結論です。

2.不確実性のもとでも意思決定の手法
不確実性のもとでの意思決定として「主観確率の活用」、「ベイジアンアプローチの活用」、「リアルオプションの利用」の3手法を取り上げています。
主観確率の活用は、既存情報を活用し、変動要素である部分の確率を主観的に決め意思決定する。この確率を決める際には、関係者と議論合意することで確率精度を上げ、理解を深めることが大切です。
ベイジアンアプローチの活用は、意思決定の際に、既存情報から変動部分を俯瞰する情報を付与し主観確率の精度を向上する手法です。意思決定の際の確率モデルにどう過去情報を組み合わせてモデル化するかがポイントです。
リアルオプションは、意思決定を段階的に行う手法です。プロジェクトをPhaseに分けて、継続可否を都度判断する手法などがあたります。ただしこの手法は、コストを伴うことも忘れてはいけないポイントです。

新しいことば:サンクコスト
過去に支出された投資額のうち、その後の意思決定によって回収できなくなった費用。